第5章 月光
テーブルに炊き立てのご飯と、熱々の味噌汁を用意すると、和と向き合って座った。
食欲なんて全然湧いてこない。
でも食べなきゃ和がきっと心配する。
「うまいじゃん」
和が少しでも和ませようとしてるのが分かったから…味噌汁を啜った。
味なんて何もしないのに…
「ホントだ」って笑って見せた。
和の顔に安堵の色が浮かんだ。
朝食を済ませ、片付けを終えると、
「じゃ、俺帰るけど…」
と、和が席を立った。
今日中に仕上げなきゃいかない仕事があるらしい。
「うん、ありがとね。も、大丈夫だから」
靴を履き、玄関先で不安そうに俺を見上げた和を、笑顔で見送った。
ドアが閉まったと同時に吐き気がおそってきた。