第5章 月光
カーテンの隙間から差し込む日差しが眩しくて、重い瞼を持ち上げた。
怠さの残る身体を起こすと、頭の片隅がズキンと傷んだ。
昨日のことなんて、殆ど憶えちゃいない。
思い返されるのは、滅茶苦茶泣いて、和に酷い事を言って傷つけた、ってことぐらい。
ベッドに凭れて眠る和を起こさないよう、そっとベッドから抜け出ると、まだ足元がふらつく。
壁を頼りに漸くキッチンに辿り着くと、米を研ぎ、炊飯器にセットしてスイッチを押した。
鍋に水を入れ、まな板に大根を置いた。
包丁を手にしたものの、それをどうしらいいのか分からなくて…
こんなんじゃだめだ…
こんなんじゃ、ちゃんと笑えない…
「ちょ、大野さんアンタ…」
慌てた様子で駆け寄ってきた和の声に、俺の今にも逃げ出しそうな心は現実に引き戻される。
「和、おはよ。飯食ってけよ」
顔も向けずにそう答えるのが精一杯だった。