第1章 アヴェ・マリア
俺が車に乗り込むと、松潤の身体が覆い被さってきた。
一瞬ドキっとしたが、伸ばされた手が求めていたのはシートベルトだ。
「シートベルト、ちゃんとしないとね」
「あ、あぁ、そうだよね…」
松潤は運転席に移動すると、キーを回しエンジンをかけた。
車は怒号を響かせ、闇の中を走り出す。
バンドルを捌く仕草、シフトをチェンジする仕草、その一つ一つの動作が、格好良くて俺は思わず見とれていた。
「あのさ~、そんな見つられたら気になって、運転できないんだけど?」
俺の視線に気付いたのか、松潤が車窓から俺に視線を移した。
「…ごめん…。こんな車運転してる松潤、すげぇなぁ、と思って…」
何言ってんだか俺…