第4章 G線上のアリア
暫くの沈黙の後、翔ちゃんが口を開いた。
「…智くんと付き合ってるらしい」
「はぁ?なにそれ。なんで潤と大野さんが付き合ってるなんて話に…?」
思わず大きな声が出てしまい、慌てて手で口を塞いだ。
「誰から聞いたのよ、その話…」
頻繁にではなくても、大野さんとはそれなりに連絡を取っていたけど、そんな話は聞いたことがない。
勿論、まーくんからも聞いたことがない。
第一本当に付き合ってるなら、恋人に対してこんな仕打ちはしないだろうし…
「潤に会ったんだ。同窓会の事で用があってね…。
その時潤から直接聞いたんだ」
なんだよそれ…
もう怒りすら湧いてこない。
「まぁ、俺も結婚する訳だし…」
「翔ちゃん、本当に結婚すんの?」
「するよ? 寧ろしなきゃまずいじゃん、親の決めた相手だし」
それでいいの?
本当に翔ちゃんはそれでいいの?
翔ちゃん誤解してる。
二人は付き合ってなんかない。
大野さんは今でも翔ちゃんだけを思ってるよ?
でもそんなこと今の俺には言えなくて、
「そっか…。大変だな、お坊ちゃまも…」
なんて嫌味ったらしい言葉を吐くことしか出来なかった。