第4章 G線上のアリア
空きっ腹にアルコール流し込みゃ、当然だけど悪酔いする訳でさ…
「ゴメ…、吐きそ…」
真っ青な顔を手で覆うと、バタバタとトイレに駆け込んだ。
「大丈夫ですか?」
便座に顔突っ込んで嘔吐する大野さんの背中を摩ってやる。
「…う…ん、大…丈……うっ…」
「吐き出しちまえよ、全部…」
そしたら少しは楽になるかもしんないのに…
漸く吐き気も治まったのか、大野さんがヨロヨロと立ち上がった。
でも次の瞬間、大野さんの身体がフワッと傾いたかと思うと、そのまま膝から崩れ堕ちそうになった。
俺は咄嗟に伸ばした両手で、大野さんの細い腰を抱き留めた。
「大丈夫?」
大野さんは小さく頷くのが精一杯といった様子だった。
「少し横になったら? アンタ、夕べあんま寝てないんでしょ?」
一瞬ハッとした顔を見せた大野さんに、下瞼を指差し、
「ここ、クマさん飼ってるよ?」
っておどけて見せると、微かに大野さんの顔に笑が浮かんだ。
覚束無い足取りの大野さんを支えながら、ベッドに横たえると、濡れたタオルを額に当てた。