第4章 G線上のアリア
ガラス戸を開けると、鼻をつく匂いが部屋に立ち篭める。
「相変わらず描いてんだ?」
机の上に所狭しと置かれた画材。
「最近はあんま描いてないよ」
俺は畳の上にどっかり腰を下ろすと、ガラステーブルにコンビニ弁当を2つ並べた。
「腹減った〜。食おうぜ」
大野さんも俺の向かいに腰を下ろし、俺に缶ビールを差し出した。
「お、サンキュ」
受け取り、プルタブを引くと、プッシュと小気味いい音と共に、細かい泡が溢れてきた。
ビールを一口喉に流し込み、弁当の唐揚げを一つ口に放り込んだ。
「うめぇな〜。
あれ、大野さん食わねぇの?」
ふと大野さんを見ると、割り箸を持ったままで、一向に弁当に手を付ける気配がない。
「ん? あー、あんま腹減ってない…かも」
そう言って割り箸を弁当の上に置いた。
「じゃあさ、腹減ったら食いなよ?」
うん、と頷くとビールに喉を鳴らした。