第4章 G線上のアリア
応答はない。
嫌な予感が頭を過ぎった。
まさかまだ潤のところに…?
でもそれは直ぐにかき消された。
「…はい」
扉の向こうから聞こえた掠れた声。
それは大野さんのものだ。
「あ、俺…二宮」
カチャンの音の直後、ゆっくり開かれた扉。
「突然悪いね」
「いいよ、入って?」
迎えてくれた顔は、いつもの柔らかい笑顔。
だけどどこか精彩を欠いていて…
「大野さん飯まだでしょ? コレ、一緒に食おうと思って買ってきた。あと、コレね」
弁当とビールの入った袋をヒョイと挙げて見せると、ビールが入った方の袋を大野さんの手が取り上げた。
「冷蔵庫入れとくな」
「あぁ、うん…」
セーターの袖から一瞬見えた手首の痣…
あれは紛れもない拘束の痕だ。
潤とまーくんの犯した罪の証…