第4章 G線上のアリア
俺はあの時、大野さんの優しさに救われた。
だから今度は俺が、大野さんを優しく包んであげたい。
俺は止まっていた足を一歩踏み出した。
コートのポケットに手を突っ込むと、スマホが着信を告げるために震えた。
メールだ。
発信者はまーくん。
「終わったよ」
たった一言の短いメッセージ。
でもそれだけで全てが伝わってきた。
まーくんのことだから、きっとスッキリ、とまではいってないんだろうな。
さて、俺もそろそろ覚悟きめねーと。
手にぶら下げていた袋から、缶ビールを一本取り出し、それを一気に煽った。
素面じゃいられないって、俺もまだまだちっちゃい男だ。
フッと自嘲気味に笑いながら、階段を登った。
ドアの前に立つと、ブザーを押した。