第15章 二人の記念日
「ごめんね、心配してくれてたんだよね、俺のこと。ちゃんと分かってたんだけどさ、どうしても今月中に渡したくて…」
「ちょ、ちょっと待って? 俺、意味が分かんない」
俺はソファーを降り、智君と向き合わせになるようにラグの上に座った。
「あ、あのさ、ちゃんと最初っから説明してくれる?」
「俺ね、翔君の誕生日に何か記念になる物をプレゼントしたくて…。で、潤に相談したら、知り合いにシルバーアクセサリーのデザイナーがいるから、紹介してやる、って言われて。で、バイトの帰りに、その人の工房に寄ってたの」
知らなかった。
そんなこと、全然知らなかった。
潤だって、つい最近会った時にも、それらしいことは一言も言ってなかったし…。
「でもさ、アクセサリー作るのなんて、初めてだったからさ…。何度も失敗しちゃって…」
自嘲気味に笑った智君の目の端に、またキラリと光る物が浮かぶ。
「思った以上に時間かかっちゃって…。ごめん、誤解させるようなことして…」
とうとう智君の頬を涙が伝う。
「ごめん、心配かけちゃって…」
智君の方が小さく震え出すのを、俺は黙って見ていることが出来なくて、気付いたらその細い身体を腕の中にスッポリと納めていた。