• テキストサイズ

Pentagon【気象系BL】

第15章 二人の記念日


ドアノブを握った手に力をこめ、ゆっくりと回そうとした、その時だった。

徐に扉が開き、俺はそれに引っ張られるようにして廊下に飛び出していた。

「翔…君?」

まえのめりになった身体を何とか立て直すと、驚いたように俺を見つめる智君の視線とぶつかった。

相当泣いたんだろうね、目が真っ赤に腫れている。

「何してるの?」

聞かれても、あれほど準備した筈の言葉が、一向に出てこない。

「何でもないよ」

廊下に出てしまった身体をリビングへと向けると、俺はまた冷蔵庫のから缶ビールを取り出した。

そんな俺の様子を、智君はリビングの入り口に立ったまま、ジッと見つめていた。

そして二本目の缶が空になった時、漸く智君が動き出した。

リビングに敷いたラグの上にペタンと腰を降ろし、俺を振り返る。

「ねぇ、座ってくれる?」

その声は、さっきまで俺に怯えていたか細い声ではない。

逆らうことは出来なかった。

俺は智君に言われるままソファーに腰を降ろした。

「で、なに? 言い訳でもするつもり? だったら必要ない。出て行くなりなんなり、智君の好きにしたらいいよ」

そんな言葉を言いたいわけじゃないのに、結局俺はどこまでも根性が悪いんだ。
/ 297ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp