第15章 二人の記念日
強引に前を開き、布越に智君の中心に触れた時だった…
「…なさい…ごめ…ちゃんと…から、許して…」
その声はとてもか細くて、開いたままの両目からは、涙がポロポロと流れていた。
その時になって、漸く俺は自分が何をしようとしていたのかに気付いた。
「…ごめん…なさ…ごめ…なさ…」
智君の上から降り、しゃくり上げるように泣く智君に布団をかけると、俺は黙って寝室を出た。
何やってんだよ、俺は…!
こんなの、脅しと同じじゃないか…
智君が一番嫌がる方法で、無理矢理身体を開こうとするなんて…俺、最低だ…
キッチンに入り、冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、それを一気に流し込んだ。
冷静になれない自分に腹が立つ。
あっという間に空になった缶をシンクに叩き付け、二本目に手をかけたところで、パタンと寝室のドアが閉まる音がした。
出て行く…
そう思った。
引き留めないと…
思うのに、身体が言う事をきかない。
今更迷う必要なんてないのに…
追いかけて、引き留めて、一言言えば済むことじゃないか。
”ごめん、一方的に責めて…”と…
簡単なことじゃないか。
俺は冷蔵庫の扉を乱暴に閉めると、廊下へと続く扉のドアノブを握り、一つ深呼吸をした。