第14章 おまけのPentagon
「俺ね、最近になって“夢”が出来たんだ」
「どんな?」
掠れた声で和が聞く。
「いつかさ、個展開きたいな、って…。でさ、ちびっ子相手にお絵描き教室、開こう、ってね?
翔君にはまだ話してないから、内緒だよ?」
唇に人差し指を当てると、和がクスリと笑って目の端に溜まった涙を腕で拭った。
「すごいじゃん」
「だろ? でもさ、これって、翔君の、お陰なんだよね…。翔君が、俺の金に手を付けないのは、俺がちゃんと前を向いて歩けるように、って事だと思うんだ。
翔君の隣に並んでも、恥ずかしくない俺になるための、ね?」
「翔さんらしいね…」
和がポツリ言う。
ホント、翔君らしくて笑っちゃうよ。
「和? 俺が言うのも変だけど、もっと相葉ちゃんに甘えたっていいんだよ?」
「でも… っ」
言いかけた和の額に、チュッと軽くキスを落とす。
「な、なに?」
驚いた様子で目を丸くする和の頭をポンと叩いてやる。
「おまじない。和が俺にしてくれたろ? だから今度は俺が和にして上げたかったの。
勇気出たろ?」
クスクス笑う俺に、和が頬を膨らせる。
「で、出ませんよ、大野さんのキスぐらいじゃ…」
そう言って唇を尖らせる和。
相変わらずの天の邪鬼っぷりは健在のようだ。