第14章 おまけのPentagon
照り付ける日差しに、全身から汗が吹き出る。
車のエアコンだって、申し訳ない程度にしか効果はない。
「何もこんな暑い最中にやらなくてもいいのに…」
隣でハンドルを捌きながら、翔君がブツブツ文句を言う。
「翔君覚えてないの?」
俺は車窓に広がる、一面の海に視線を向けた。
「今日ってさ、俺達が最後の夏休みを過ごした日なんだよ?」
色とりどりのパラソルが並ぶ砂浜に、あの日の俺達を思い浮かべる。
まだ幼かったあの日を…
「そっか…」
それっきり俺達は特に会話をすることもなく、相葉ちゃんの家へと車を走らせた。
相葉ちゃんの家に着くと、おばちゃんが相変わらずの笑顔で俺達を迎えてくれた。
「さとちゃん、ちょっと太ったんじゃないかい?」
そう言っておばちゃんは俺の背中をバシバシと叩く。
そして隣の翔君に目を向けると、一言…
「さとちゃんを泣かしてないだろうね?」
と、低い声。
「ま、ま、ま、まさか! とんでも無いです!」
慌てる翔君が可笑しい。
「だったら安心だ」
おばちゃんは妙に納得した様子で俺達を家に招き入れてくれた。
リビングに通されると、大きなテーブルを二つ並べた中央に、相葉ちゃんのお父さんと、その横に和の両親が座っていた。