第13章 ひとりじゃないさ
「泣かないで?」
翔君が泣いたら俺も泣きたくなるから。
俺は少しだけ身体を伸ばして翔君の頬を濡らす涙を吸い取った。
「翔君て泣き虫なんだね? 今日一日で色んな翔君を知ったよ? 泣き虫な翔君でしょ、嫉妬してる翔君…それに…」
指折り数える俺の手を、翔君の手が絡め取る。
「しょ…?」
俺の言葉を塞ぐように翔君の唇が重なる。
そのまま角度を変えながら、俺の視界はゆっくりと反転していく。
ベッドに押し倒されて、翔君の身体が俺の身体に被さる格好になった。
唇が離れ、見上げた先に大きな目を細めて俺を見下ろす翔君の顔があった。
「灯り…消して?」
ここから先は恥ずかしいから…
「やだ。俺に見せて? 智の全てを…俺に見せて?」
「翔君も見せてくれるの? 全部…」
「見せてあげるよ? 智が俺のことをもっと好きになるようにね?」
「…ばか…」
俺はそっと瞼を閉じた。
翔君の唇が閉じた瞼にそっと触れる。
頬を撫でる手が、額にかかった髪を撫で上げ、額にもキスが降ってくる。
「好きだよ…愛してる…」
そして唇にキス。
優しく唇をこじ開けられ、翔君の舌先が差し込まれた。
震える舌先が俺の舌を絡め取る。
「ん、ん…ふぅ…っ…」
シンと静まり返った部屋に、俺達の荒くなる吐息と、絡み合う舌先が出す水音が響いた。