第13章 ひとりじゃないさ
同窓会も無事滞りなく終わり、俺は智君の待つ部屋へと急いだ。
途中、岡田と斗真が俺を呼び止める。
「今度みんなで飲もうな?」
「潤にも俺から声かけとくから」
「あぁ、楽しみにしてるよ」
二人にありきたりな返事を返し、俺はエレベーターに乗り込んだ。
「あ、櫻井!」
岡田の声に、俺は慌てて”開く”と書かれたボタンを押した。
「いらなくなったらいつでも言えよ? 俺、貰うから」
そう言って岡田は手をヒラヒラと、俺に背を向けた。
俺は”開く”から”閉じる”に指を移動させる。
ゆっくり閉じるドアの間から、ニタニタ笑ってこちらを見る岡田の顔があった。
「誰が渡すもんか…」
俺は岡田に向かって舌を出して見せた。
ニノに渡したのは、このホテルのカードキー。
それを智君が受け取ったのかどうかは、俺は聞かないことにした。
期待してしまうから。
エレベーターが31階で停まった。
自動でドアが開いても、一歩足を踏み出すのが怖い。
もしいなかったら…?
ポケットの中のもう一枚のカードキーをギュッと握り締めた。
ドアが閉まる寸前、俺は意を決して狭い空間から飛び出した。
目の前に広がる、無限に続くとも思えるような長い廊下を、
カードに書かれた数字を手掛かりに、各部屋のドアに目を向け歩く。
3104…サトシ…
あった。
俺は一つ深呼吸をして、カードを差し込んだ。