第13章 ひとりじゃないさ
翔side
「翔君が良くても、俺は嫌なの。分かってよ?」
智君の言葉に、俺を気遣う気持ちが含まれていたのは分かっていた。
「そっか、そうだよね。智君の気持ち考えてなかった、ごめん」
でもね、智君?
俺は君の為なら、どれだけ傷ついたって構わないよ?
じゃなきゃ、この先ずっと何があっても君を離さない、なんて立派なこと言えないからさ。
「翔君、ちがっ…」
智君が言いかけた時、丁度会場の照明が暗転した。
暗闇の中、俺に向かって戸惑いがちに伸びて来る手に気付いてないわけじゃなかった。
俺だってその手をとりたいよ、でも…
君は泣いてたんだ。
一人、声も上げずに…
ただ金屏風の前に立つ斗真の姿を見つめて、君は静かに涙を流していたんだ。
「気分悪い?」
そう言って肩に触れた手をそっと振り払い、君は会場を出て行った。
俺はただ黙ってその姿を見送った。
「潤のこと、思いだちゃったんですかね?」
ずっと見てたんだろうね、声の先にニノが立っていた。
「多分ね…。ニノ、悪いけど…」
「分かってますって。俺に任せなさい。あ、でも“嫉妬”丸出しは勘弁ですからね?」
朝の一件のことを言っているんだ、と瞬時に分かった。
「あぁ…アレは悪かった。俺も大人気なかった」
「まぁいいですよ。あんな翔さん、滅多にお目にかかれませんからね」
揶揄い口調のニノに、オレはポケットから一枚のカードを取り出し、差し出した。
ニノは黙ってそれを受け取った。