第13章 ひとりじゃないさ
「安心しろ、奪(と)ったりしないから。まぁ、仲良くやれや」
そう言うと岡田はケラケラと笑いながら俺たちに背を向けた。
「相変わらずなのはアイツの方だよ」
俺の肩口に顔を乗せた翔君が、岡田の背中に向かって舌を出して見せた。
「ふふ、翔君てやっぱり可愛いよね? 子供みたいだよ? それに…」
「それに、何?」
少し顔を横に向ければ、触れてしまいそうな距離に翔君の顔があることに、俺の心臓が激しく脈打つ。
「な、なんでもないよ。それより、みんな見てるから…ね?」
時折刺さる冷たい視線と、漏れ聞こえる翔君を蔑むような言葉。
翔君がそれを感じてないわけがない。
なのに、
「いいよ、俺はどう思われたって」
どうしてそんな風に思えるの?
俺は耐えられないよ、翔君が好奇な目で見られることも、汚い言葉で罵られるのも、俺は…
「翔君が良くても、俺は嫌なの。分かってよ?」
俺の言葉に翔君の顔が一瞬曇る。
そして俺の背中と肩に感じていた体温が消えた。
「そっか、そうだよね。智君の気持ち考えてなかった、ごめん」
翔君、勘違いしてる?
どう思われたっていいのは俺の方なんだ。
今更奇異の目で見られようが、面白おかしく騒ぎ立てられようが、俺はもうそんなことで傷ついたりしない。
でも、翔君だけは傷ついて欲しくない。
「翔君、ちがっ…」
言いかけた時、会場の照明が暗転した。