第13章 ひとりじゃないさ
会場のホテル駐車場に着くと、運転席から颯爽と降りた翔君が、助手席のドアを開けてくれた。
「どうした?」
シートベルトを外したところで俺の身体はまた固まってしまう。
「…ううん、なんでもない」
そう言って首を振るのがやっとで…
「もしかして、緊張してるの?」
翔君が俺の顔を覗き込む。
そうなのかもしれない。
翔君の言う通りなのかもしれない。
同級生、とは言っても、俺は卒業以来会ってもいない奴らばかりで…
当然だけど、俺と翔君の”噂”だってきっと知ってる筈。
だからちょっとだけ怖くて…
でも、
「大丈夫。傍にいてあげるから、ね?」
優しい笑顔と、髪を撫でてくれる温かい手が、俺の緊張を少しずつ解していく。
「うん、いこ?」
不意に目の前に伸びてきた手を、俺はしっかりと握った。
地下駐車場から二人でエレベーターに乗りこんだ。
手は握ったままだった手は、エレベーターの扉が開くと同時に、ゆっくりと解かれた。
ロビーを通り抜け、同窓会の会場になっているホールが近付くにつれ、見知った顔とすれ違う回数が増えて行く。
「よぉ、櫻井」
皆一様に翔君の顔を見ては、気軽に挨拶を交わしていく。
「おぉ、久しぶりだな」
翔君もそれに応えるように、笑顔を向けた。