第13章 ひとりじゃないさ
「それは、和とはずっと連絡も取ってたし、それに…」
「分かってるよ? 俺だってちゃんと分かってるんだけどさ…」
翔君が寂しそうに眉を潜め、顔を手で覆った。
そして指の隙間からキッリと光る滴。
その姿に、俺はただ俯くことしか出来なくて…
どうしたらいい?
翔君のそんな苦しそうな顔、俺は見たくないよ?
「翔…君…」
俺はシートベルトを外し、運転席に身を乗り出すと、翔君の首の腕を回した。
「ごめんね? だから…泣かないで?」
「智君…智…」
俺に応えるように、翔君の腕が俺の背中に回った。
そのままギュッと抱き締められ、ずっと繋いでいた手が解かれた。
「翔君?」
俺の頬を翔君の手が優しく撫でた。
「キス、していい?」
そんなこと訊かなくても、答えは分かってるくせにね?
俺はゆっくり瞼を閉じた。
そして唇にそっと触れた、小さく震える翔君の唇。
背中に感じる温もりが、グッと俺を引き寄せる。
「苦しい、よ…」
触れただけの唇を離し、俺は翔君に苦情を言う。
そして今度は自分から翔君の唇にキスをした。
もっと深く翔君を感じたくて…
薄く開いた唇の隙間から、翔君の舌が戸惑いがちに入ってきて、俺の舌先に触れた瞬間、甘い痺れが身体を駆け巡った。