第13章 ひとりじゃないさ
蘇る記憶に、胸が締め付けられそうになる。
俺は無意識に翔君の手を握った。
「どうした? 顔色悪いけど…」
車を路肩に停め、翔君が俺の方顔を覗き込んだ。
「この曲…あの時の?」
一瞬驚いたような顔をした翔君だったけど、何かを思い出したのか、すぐに悲しそうに目を伏せた。
「ごめん、気付かなかった。止めようね?」
違う。
違うんだよ…。
そんな顔させたかったわけじゃないんだ…
「なんか色々思い出しちゃって。俺の方こそ、ごめん…」
翔君がゆっくりと首を横に振る。
そのままシートにドカッと背中を預けると、翔君が溜息を一つ零した。
「なんか俺、全然駄目だね? 余裕ない…」
「そんなこと…俺だって…」
それっきり翔君も俺も口を開くことが出来なくて、ただ窓の外の景色を二人で暫くの間眺めていた。
「さっきもさ…」
漸く口を開いた翔君がクスッと自嘲気味に笑った。
「さっきも俺、嫉妬してたんだ…ニノに…」
「えっ、なんで?」
「キス…してただろ? 智君に…」
見られてたの?
だからあんな態度…
「結局さ、俺よりもニノの方が智君のこと、ずっと良く理解ってんじゃないのかな、ってね?」
繋いだままの手に、グッと力が籠められた。