第13章 ひとりじゃないさ
和の提案で、相葉ちゃんの店の前で写真を撮った。
「見せて?」
そう言う俺に、和は写真を見せることなく、送信ボタンを押した。
「ねぇ、見せてよ…」
尚も粘る俺に、和がクスクスと笑いながら、ネクタイをシュルッと抜き取った。
「えっ、なんで?」
「後は翔ちゃんに頼みな?」
俺の手にネクタイがポンと渡された。
そして一言、
「七五三みたいで可愛かったですよ」
七五三て…
潤が俺のために、ってせっかく仕立ててくれたけど、
「俺やっぱりこれきてかない…」
ジャケットを脱いだ俺を、和が慌てて止めた。
「それはだーめ。ちゃんと着て?」
「だって翔君もきっと笑う…」
「笑わないって、ね? 翔ちゃん、喜ぶよ?」
何とか俺を宥めようとする和の手の中で、スマホが軽快な音楽を奏で始めた。
「あ、翔ちゃんからだ。…もしもし?」
なんで俺じゃなくて、和なの?
「あ、ちょっと待ってて、今替わるから」
和が俺の前にスマホを差し出す。
「替われってさ」
そう言って和がクスリと笑う。
スマホを受け取り、耳に宛てると、俺は和に背中を向けた。
自然と頬が緩むのを見られたくなくて…
「翔、くん?」
「あ、智君? ネクタイ、用意しといてね?」
「えっ、うん…。って言うか、覚えてたんだね、俺が自分でネクタイ結べないの…」
そんな些細なことが嬉しくて、俺はますます頬が緩むのを感じた。