第13章 ひとりじゃないさ
迎えた同窓会当日。
俺は約束の時間よりもうんと早くに支度を済ませた。
潤が送ってくれたスーツを身に着け、鏡の前に立つ。
「似合うじゃないですか? 流石潤だね」
正直、こんなの着慣れていないせいか、今いち自分では似合ってるのか、どうなのかさえ分からない。
「あ、ねぇ和…。ネクタイ、しなきゃダメ?」
鏡越しに和の顔を見る。
「そりゃしなきゃダメなんじゃない?」
そうだよね…
した方がいいよ、ね…
俺はワイシャツの襟を立て、ネクタイを巻き付けた、けど…
ネクタイの両端を手に、鏡を見つめたまま、動けなくなる。
「ねぇ、和…」
「もしかして大野さん、ネクタイ自分で結べないとか?」
言いかけた俺の言葉を遮るように、和が揶揄い口調で俺を覗き込んだ。
「…うん。で、でも、教えてくれれば…多分…」
だんだん消え入りそうになる声に、和がクスクスとお腹を抱えて笑い出す。
「笑わない…でよぉ…」
「ふふ、ごめんごめん…ってかさ、大野さん今までどうしてたの?」
どうしてた、って…
「あんまり必要なかったから、ネクタイなんて…」
「そっか…ほら、こっち向いて?」
和の手が俺の手からネクタイを取り上げ、ぷっくりとした手が、器用にネクタイを結ぶ。
「はい、できましたよ」
「ありがとう…。でね、もう一つお願いがあるんだけど…」
何も言わなくても通じたのか、和が小さく“わかってるよ”と言った。
きっと和は知ってる筈だから…潤の連絡先を…