第12章 愛の夢
「雅紀、お前降りろ」
訳も分からないまま、相葉ちゃんが翔君の迫力に押されて車を降りた。
そして開かれた後部座席のドア。
「智も降りて?」
その瞬間俺の心臓がドクンと大きく脈打った。
だってそんな呼び方…されたことない。
戸惑う俺に、翔君の手が伸びてきて、和と繋いだ手を解いた。
「智はこっち。お前はそこ座れ」
俺は引き摺られるように車を降ろされ、助手席に押し込まれた。
相葉ちゃんがブツブツ文句を言を言いながら後部座席に乗り込んだのを見計らって、助手席のドアが閉められた。
運転席に乗り込んだ翔君が、俺に覆い被さる。
「シートベルト、しないとね?」
至近距離にある翔君の顔が、優しく微笑む。
「うん、あり…がと」
そして車は再び走り出した。
相葉ちゃんの家に着くまでの間、俺と翔君の手はずっと繋がれたままだった。
「さとちゃん、おかえり」
車から降りた俺を、おばちゃんが笑顔で俺を出迎えてくれた。
「ただいま。心配かけて、ごめんなさい」
頭を下げた俺の肩に、おばちゃんの手がポンと乗った。
「いいんだよ、子供の心配するのが親の務めだからね? そんなことより、あの子かい、さとちゃんの”いい人”は?」
おばちゃんの親指が、車から降りた翔君をクイッと指した。