第12章 愛の夢
翔side
“一緒に…”と言った俺の言葉を、智君が拒んだ。
一人にしてくれと言う智君の言葉に、分かったと答えたものの、実際のところ心中は穏やかでかはない。
それでも額にキスを一つ落とし、細くなった身体をギュッと抱きしめることで、なんとか自分の気持ちと折り合いをつけた。
廊下に置かれたベンチに三人で腰を下ろすと、ニノが俺の膝に手を置いた。
「翔さん、落ち着いて? さっきから貧乏揺すり、酷いよ?」
ふと自分の足元に目をやると、俺の膝は無意識の内に忙しなくリズムを刻んでいた。
「信じて上げて、大野さんのこと?」
そんなこと今更言われなくても、充分過ぎるほど分かってる。
それでも拭い切れない不安が、俺を焦らせる。
「翔ちゃんさぁ、余分なことばっか考え過ぎ何だよ。もっとさ、気を大きく持ってないと、大ちゃん逃げてっちゃうよ?」
「おっ、まーくんにしてはいいこと言うじゃん」
ニノが雅紀の言葉に同調するように手を叩いた。
「いいんですか、逃げてっちゃっても?」
それは困る…
「ふふ、そんな顔しないの? 大野さんもう翔さんから逃げたりしないから」
「そうそう。でもさ、それも翔ちゃんがしっかり手握ってれば、の話だからね?」
俺は二人の言葉に、大きく頷く。
「分かってる。もう離さないから…絶対に」
この先俺たちの間に何があっても、絶対に…
見つめたドアの向こうで、智君の啜り泣く声が聞こえた。