第12章 愛の夢
翔君が身体を起こし、ベッドの端に腰かけた。
一人ベッドに寝転んだままの俺は、急に離れてしまった温もりに、縋る様に手を伸ばした。
「トイレ…行ってもいい?」
シャツの裾をギュッと握った俺に、翔君が照れくさそうに言う。
「あ、ごめん…」
俺は慌てて手を離した。
翔君のシャツの裾は、すっかり皺くちゃになっていた。
「ほらほら、翔ちゃん早く行かないとお漏らししちゃうよ?」
相葉ちゃんが翔君の背中を押しながら揶揄う。
「煩いんだって、お前は…」
呆れた様子で溜息を零しながら、翔君が寝癖だらけの頭をポリポリ掻きながら部屋を出て行った。
「大野さん、良く眠れたみたいだね?」
和がパイプ椅子に腰を降ろしながら俺に微笑みかける。
「それ、何?」
俺は和が抱えていた箱を指さした。
「あぁ、これ? これ、マンションに不在票入っててさ…。潤から大野さん宛に…」
和が箱をベッドの上に置いた。
「なになに? リーダー誕生日かなんかだっけ?」
相葉ちゃんが箱を覗き込むけど、和がそれを押し退けた。
「まーくん煩いよ? ちょっと黙ってて?」
「…ちぇっ、皆してさ…酷いよ」
そう言いながらも相葉ちゃんはケラケラ笑っていて…
無意識、なんだろうけど、きっと俺のためにそうしてくれてる、って分かるから俺も釣られるようにクスリと笑う。
俺は身体を起こし、ベッドヘッドに背中を凭せ掛けると、箱を膝の上に乗せた。
「中は見てないから俺も知らないけど、開けてみなよ?」
「…うん…」
頷いたものの、手が箱を開けるのを躊躇う。
「一緒に開けようか?」
いつの間に戻ってきたのか、俺の手に翔君の手が重なった。