第12章 愛の夢
「えっ、何…?」
戸惑う俺を他所に、翔君の腕が俺の首の下に差し込まれた。
そのまま引き寄せられ、当然だけど俺は翔君の胸に顔を埋める格好になった。
「しょ…翔君? あの…」
「あんまり寝れてないんでしょ? こうしてて上げるから、今夜はゆっくり寝て?」
翔君が喋る度、熱い吐息が俺の前髪を揺らした。
「…うん」
俺は瞼を閉じ、その厚い胸にピッタリと頬を付けた。
トクン、トクン…
さっきよりももっと近くに感じる鼓動に、ゆっくり呼吸を合わせた。
そっと翔君の背中に腕を回し、シャツを握った。
目が覚めた時、翔君の温もりがまだここにあるように、ギュッと強く握り締めた。
「大丈夫。どこにもいかないよ? そばにいるから、おやすみ?」
俺は翔君の胸で小さく頷く。
まるで魔法使いだ。
俺の思ってること、翔君にはお見通しなんだね。
徐々に遠ざかる意識の中で、俺は一人クスリと笑った。
窓から差し込む日差しと、僅かに感じる肌寒さに瞼を持ち上げる。
「しょ…くん…?」
視線を横に向けると、布団に包まった翔君の寝顔。
寒いと思ったら…
翔君、寝相最悪じゃん。
俺は翔君から布団を半分奪い取ると、胸にピッタリと頬をくっつけた。
翔君が目を覚ますまで…
翔君が起きるまで、
こうして寝たふりをしていよう…
それぐらいはいいよね?