第12章 愛の夢
頭を抱え込んだ俺の背中を、翔君の手が摩った。
「潤は俺のこと捨てたんじゃないの? 俺のこと嫌いになったんじゃないの? ねぇ、潤は…」
「違うよ智君。アイツは智君のこと、本気で愛してたよ?」
嘘…
だったら俺のこと一人になんてしたりしない。
「でもさ、愛せば愛すほど、智君の気持ちが自分にないことが辛かったんだよ。だからわざと俺に見せつけるような真似を…」
急にしまった、という顔をして視線を逸らす翔君。
「潤が翔君に? 何を…?」
途端に口籠り、視線を泳がせる翔君の顔を俺は覗き込んだ。
「言って? 潤が翔君に何を見せたの?」
俺には言いたくないの?
それとも、言えないことなの?
「智君は気付いてないかもしれないけど、俺、行ったんだ…潤の部屋。そこで見ちゃったんだ、智君の…。それと、電話…」
俺の脳裏に記憶が蘇る。
あれは夢じゃなかったんだ
あの時、頬に触れた手は翔君だったんだ。
「潤とは同窓会のこともあって、まめに連絡は取り合ってたんだ。で、たまたま電話をかけた時、その…智君の声がして…」
あの時だ。
潤は仕事の相手だって言った、あの時。
俺はあの時一瞬だって電話の相手が翔君だなんて疑いもしなかった。
聞かれてたんだ、俺が潤に抱かれて喜ぶ声も…
潤に抱かれて、欲に塗れた姿も、全部翔君は見たんだ。
なんだ…
「…だったら話早いじゃん」
俺は翔君の首に腕を回した。