第12章 愛の夢
あ、そうださっきの相葉ちゃんと和の喧嘩…。
もしかしたら相葉ちゃんが翔君に?
だとしたら…もしそうだとしたら、翔君はどこまで知ってるの?
俺と潤のことも?
「ご、ごめん、も、大丈夫だから、離して?」
俺は翔君の胸を両手で押した。
「どうして?」
俺の顔を覗き込む翔君の目に、不安の色が浮かぶ。
「なんでもないから…。だから、俺から離れて?」
「やだよ、離さないよ?」
翔君の腕にグッと力が込められた。
「お願…い? ね、お願いだから…!」
抵抗すればするほど、俺は翔君の腕に包まれていく。
そして不意に重ねられた唇。
「ん…んん…、や、だぁ…っ!」
俺は渾身の力を込めて翔君の身体を押し退けた。
「なんで! 俺はずっと智君とこうしたかったよ? なのに智君は違うの? も、わっかんねぇよ…」
翔君の手が顔を大覆った。
違うんだ…。
本当は俺だって…。
でも俺は潤に…、
自分の寂しさを埋めるために、潤に抱かれた。
そんな俺に、翔君に愛される資格なんて、ないんだよ…。
「ごめん、ごめん…なさい、しょ、く…、ごめ…」
何度言ったって足りない言葉を、まるで呪文のように繰り返す。
「もういいよ…。分かったから…」
翔君の感情の籠らない声。
瞬間、頭の中で何かが弾けたような感覚に襲われた。
目の前が真っ白に霞んだ。