第12章 愛の夢
友達なんだから、電話がかかってくるぐらい普通のこと…
そんな簡単なことすら考えられないぐらい、俺は動揺していた。
せめて声だけでも…
声だけでもいいから聴きたい…
そう思いながら、震える指先は液晶をタップしていた。
恐る恐るスマホを耳に宛てた。
「もしもし、雅紀?」
聞こえてきた愛しい人の声に、俺の目から堪えきれず涙がこぼれる。
「もしもし、おい、聞いてんのか?」
「…しょ…く…ん…?」
漸く絞り出した小さな声。
「えっ、さ、智君…なの…?」
翔君が驚いたような声を上げた。
「しょ…く…、しょ……ん…」
会いたい…
会いたくて会いたくて…
一生懸命声に出そうとするのに、ガタガタと震えだす身体と、激しく打ち付ける鼓動、そして徐々に上がっていく呼吸がそれを拒む。
「智君? ねぇ、智君?」
「…息…でき…い…たす……け…て…」
グラグラと揺れる視界の中、俺を名前を呼ぶ翔君の声が段々と遠ざかっていく。
行かないで…
俺を一人にしないで…
感覚を無くした指先はスマホを持っていることすら出来なくて、スマホが畳に落ちるのと同時に俺の身体もその場に崩れ落ちた。
俺はそのまま意識を遥か遠くに飛ばした。