第12章 愛の夢
相葉ちゃんはそれきり口を閉ざしてしまったから、俺もそれ以上はもう何も言わなかった。
『忘れた』ことにしよ?
そしたらお互い少しは楽になるからさ…
俺は無言のまま相葉ちゃんに目で訴える。
相葉ちゃんもそれを受け止め、唇の動きだけで”ありがとう”と俺に返した。
俺達は同時に目を閉じた。
すぐに聞こえ始めた相葉ちゃんの豪快な鼾に、笑いが込み上げる。
俺は…やっぱりぐっすりと眠ることは出来なかったけど、繋いだ手が伝えてくれる温もりに、心まで温かくなるのを感じた。
俺が目覚めた時、そこに相葉ちゃんの姿はなかった。
相葉ちゃんの朝は早い。
早朝から店の開店準備をしなくてはならないから。
ふと枕元に置かれた相葉ちゃんのスマホが目に入った。
「もう相変わらずなんだから…」
溜息交じりに呟き、それを手に取った。
その瞬間、俺の手の中で相葉ちゃんのスマホがけたたましい音楽を鳴らしながらブルブルと震えた。
アラーム?
ううん、違う…。
アラームだったらこんな時間に鳴る筈がない。
俺は迷いながらもそっとスマホのカバーを開けた。
そこには着信を知らせる画面と…
『櫻井翔』の文字。
なんで?
どうして翔君が相葉ちゃんに…?
俺の心臓がまるでフルマラソンでもしたかのように、激しく鼓動した。