第12章 愛の夢
「ちょっとマンションに帰って来る」
同窓会を3日後に控え、和が言った。
そんな一言にも、俺は不安になる。
「…戻って、来るよな?」
「当たり前でしょ? 急ぎの仕事片づけたらすぐ帰って来るから…ね?」
和の手が俺の頭を撫でた。
もし…もしも俺が引き留めたら、和はずっとここにいてくれるんだろうか?
そんな甘い考えが脳裏を過る。
「そんなに不安? 俺が帰って来ないんじゃないか、って…」
俺の不安を察したのか、和が眉を潜める。
困らせたいんじゃないんだ。
和を信じていないわけじゃないんだ。
我が儘な俺は、言葉だけでは足りなくて、もっと…と願ってしまう。
それが結果として和を困らせていることに、ちゃんと気付いているのに。
「…ほんと馬鹿だね、大野さん…」
俺の身体がフワッと暖かさに包まれた。
「なんで信じないかなぁ? もっと俺を信じてよ? …ね?」
身長差なんてないのにね…
和の胸がとても広く感じたのは…どうしてだろう?
「…ごめん、大丈夫だから。行って?」
「うん、速攻で仕事終わらせて来るから、ちょっとだけ待ってて?」
「うん、待ってるから…だから、超速攻で仕事終わらせろよ?」
俺は出来る限りの虚勢を張って見せた。
和也はそれに笑顔で応えてくれた。