第11章 Amazing Grace
翔の家を出てから、俺はどこへ行く宛もないまま車を走らせた。
車窓から見える懐かしい景色は、どれも色褪せることなく、俺の胸に忘れかけていた記憶を呼び起こした。
そしてそれと同時に苦い思い出も蘇る。
若さゆえの過ち…
そう言ってしまえれば気は楽になるんだろうか。
いや、違うな…
そんな言い訳も出来ないほど、俺は多くの人を傷付けた。
深く…
一番残酷なやり方で…
最低だな…
車はいつしか海岸沿いの道に出ていた。
高校生活最後の夏休み、5人で来た海水浴場がもうすぐそこに見えていた。
適当な場所に車を停めると、砂浜へと降り立った。
シーズン前ということもあってか、人影は疎らだ。
吹き付ける潮風と、サラサラの砂に足を取られながら、波打ち際まで歩を進めた。
ふとあの日の智の泣き腫らした顔が脳裏に浮かんだ。
ニノに手を引かれ、俯いたまま顔をなかなか上げることが出来なかった智。
その姿を見た時、俺は智と翔が別れを決めたことを知った。
これで俺の物に出来る…
そう思っていた。
その時の俺は、きっと独占欲だけが勝っていたんだろう。
今思えば、本当に子供だったんだと思う。