• テキストサイズ

Pentagon【気象系BL】

第11章 Amazing Grace


「頭を上げなさい」

先に沈黙を破ったのは翔のお父さんの方だった。

「君に頭を下げられる言われは、私にはない」

そうかもしれない。
でも…

「許して貰えるまで、俺は…」

そうだ簡単に引き下がるくらいなら、最初っからここには来ない。

「許すも許さないもない。これは私と翔の問題だ。君にとやかく言われる筋合いなどない」

確かに俺が何を言ったところで、この人の気が簡単に変わる訳無い、そんなこと他人の俺にだって分かっている。

でも今の俺は、例え無駄だと分かっていても、こうせずにはいられないんだ。

あの時、翔と智が別れた原因の一端は、俺にもあるから。

「俺は自分のしたこと、後悔してます。俺があの時おじさんに告げ口なんかしなきゃ…今頃2人は…」

俺は顔を上げ、翔のお父さんを見上げた。

見下ろす視線は…酷く冷たかった。

そしてシガーケースから煙草を一本取り出すと、それを指で弄びながら、

「要件はそれだけか?」

眉一つ動かすことなく、感情のない声が響いた。

俺はノロノロと立ち上がると、翔のお父さんに背を向けた。

「俺はあの時、自分の勝手な欲望のままに過ちを犯しました。なのにまた同じ過ちを犯した…。人って本当に愚かな生き物ですね…」

俺は背中に感じる視線から逃れるようにドアを開けた。
/ 297ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp