第9章 子守唄
おばちゃんの言葉に、俺の冷え切っていた心が少しずつ温度を取り戻していくのを感じた。
俺の父ちゃんも母ちゃんもそんな風に思ってくれているんだろうか?
「さとちゃんと櫻井さんとこの坊ちゃんの噂が流れた時ね、雅紀が言ったんだよ、
”リーダーはそんな奴じゃない。二人は本気で好きあってるんだ”
ってね。勿論、私は雅紀の言葉を信じたよ? だって息子だもの。私が信じなくて誰が信じてやれるの、あの子を」
相葉ちゃんがそんなことを思ってたなんて、俺は何も知らなかった。
何も知らずに、俺は一人逃げ出したんだ。
「だからさ、今すぐには無理かもしれないけどさ、電話ぐらいしてやったらどうだい? さとちゃんのご両親もきっと心配してるよ?」
気づいたら泣いていた。
無意識に零れる涙を止められなかった。
しゃくり上げながら、すっかり温くなってしまったプリンを口に運んだ。
どうしてだろう、同じプリンなのにさっきよりも、うんと甘く感じるのは。
おばちゃんのぽってりした手が、また俺の頭を撫でた。
今度はそれを払いのけたりはしなかった。
だってとても気持ちが良かったから…