第9章 子守唄
軽トラの乗り心地は…正直あまりよくはない。
それに加え、おばちゃんの運転の恐ろしいこと…
俺は助手席専門だから、これまで車の運転に口を出したことは一度もない。
でも…
「お、おばちゃん…あ、危な…」
生きた心地がしない、ってこう言うことか、と改めて思った。
市場に着いた頃には、俺はすっかり疲れきっていた。
「さあ、着いたよ」
早く降りるよう急かすのに対して、俺は首を横に振った。
「俺ここで待って……えっ、えぇっ!?」
俺の身体はおばちゃんに依って、容赦なく車外に放り出された。
「あんた私みたいにか弱いおばちゃんに、重たい荷物持たせる気かい?」
とてもか弱くは見えないが…
思いながらも、有無を言わせぬおばちゃんの勢いに押され、カラコロと鳴るおばちゃんの足元を見ながら後を着いて行った。
市場はとても活気づいていて、そこら中から客引きの声が飛び交っていた。
どんどん増えて行く荷物に、自分の体力の無さを痛感する。
「ちょっとそこで休むかい?」
フラフラの俺を見兼ねたんだろう、おばちゃんが近くの喫茶店を指指した。
「でもこの荷物…」
俺の両手は食材の入った袋がいくつもぶら下がっている。
「あら、それじゃあ無理だねぇ…」
おばちゃんはガハハと笑いながら、喫茶店の前を通り過ぎた。
そして俺はまたその後をフラフラと着いて歩いた。