第9章 子守唄
「大丈夫だから、オレがついてるから」
玄関先で座りんで動けなくなってしまった俺に、和が背中を摩りながら何度も繰り返した。
怖いんだ…
断片的に蘇る記憶。
その中で、俺は相葉ちゃんに組み敷かれながら、淫らなまでに快楽に溺れ、女のように嬌声を上げていた。
決して自分から求めたわけでも、望んだわけでもないのに、だ。
きっと軽蔑したに違いない。
「なんでそんな震えてんの? もう誰もアンタのこと傷つけたりしないよ?」
和の腕が俺をギュッと、抱き締めた。
「俺じゃさ、翔ちゃんの代わりにはなれないけどさ…アンタを守ってやることは出来るからさ…」
俺は和の腕の中でただただ頷くことしか出来なかった。
和だってきっと辛いよね?
相葉ちゃんとの関係が悪くなったのだって、多分俺と潤が原因。
それなのにどうして?
どうしてそんなに優しくなれるの?
「あ〜ぁ、俺翔君じゃなくて、和のこと好きななれば良かった…。すげぇ、優しくしてくれそうじゃん…?」
俺は涙でグチャグチャになった顔を袖で拭った。
和のぷっくりした柔らかい手が俺の頭を撫でた。
「本当だよな? 俺もあんな“オバカ”じゃなくて、大野さん好きになれば良かったよ」
多分無理だろうけどね、と和は自嘲気味に笑った。