第9章 子守唄
和は当然のように俺を受け入れてくれた。
和だって、相葉ちゃんとの間に問題を抱えてたのに。
和の部屋で迎えた最初の朝、ベッドで寝ていた筈の俺の身体は、何故かリビングの窓辺にあった。
「そんな所で寝てたら風引くよ」
って和は笑ったけど、それが何日も続くと、流石に自分でもおかしいと思えてくる。
それに加えて抜けない身体の倦怠感。
四六時中襲って来る吐き気と息苦しさに、時折耐え切れなくて…
でもそれを和には悟られたくなくて、心配させたくなくて、無理に笑顔を作っていた。
「まーくんに会いに行く」
何度メールを送っても返信のない相葉ちゃんに、とうとう和が痺れを切らした。
「ちゃんと話、して来いよ?」
下駄箱の上のキーボックスから車のキーを取り出す和に声をかけた。
「何言ってんの、大野さんも行くんだよ?」
思いがけない言葉に、俺は動揺してしまう。
だってあれ以来相葉ちゃんには会っていない。
あんなことがあった後で、どんな顔して会ったらいいのか…
「やだ、行きたく…ない…行かない…」
こみ上げる吐き気に、目の前が暗くなった。
足元がグニャリと歪み、立っていられなかった。
倒れる…
そう思った瞬間、俺の身体を和の腕が支えた。