第9章 子守唄
ずっと夢の中を彷徨っていた。
あの日感じた翔くんの指の温度、
俺の名を呼ぶ声…
全てが夢であったら…
そう思っていた。
でも実際は夢なんかじゃなくて、
日を追うことに大きく、溢れそうになる感情に、俺は無理矢理蓋をした。
自分の気持ちを押し殺し、潤が与えてくれる愛情を、当たり前のように受け入れた。
潤の腕に抱かれていれば、忘れられたから。
でもそんなのは長くは続かなくて、潤に抱かれながら、偽りの愛を囁く自分が、どうしようもなく嫌になった。
きっと潤も気付いてたんだと思う。
だから俺を和に託した。
出張なんて、真っ赤な嘘。
一緒に生活してて、それに気づかないほど、俺だってバカじゃない。
「一週間で帰って来る」
潤はそう言った。
でも、潤はもう帰って来ない。
俺は捨てられたんだ、潤に…
潤を騙した罰が当たったんだ。