第8章 椿姫
雅紀side
和と下へ降りると、母ちゃんの笑い声がリビングに響いていた。
たまに大ちゃんがクスクス笑う声が聞こえた。
「二人して何笑って、って、それっ!」
俺は二人の手から“笑いの原因”を取り上げた。
「なんだい、折角さとちゃんと見てたのに、ねぇ?」
「フフ、変わってないんだね、相葉ちゃん」
なんだよ、2人で顔なんか見合わせちゃってさ…
でも、大ちゃんが笑ってるのがちょっと嬉しくて…
まだ大ちゃんは笑えるんだ、って思ったら安心したのも本当で…。
ふと和の顔を見ると、多分俺と同じ事考えてるんだ、って思った。
「さあ、あんた達お風呂入っちゃってよ?」
そう言って一枚ずつ手渡されたバスタオル。
「さ、行っといで」
って、母ちゃん?
「オレらもう大人だぜ? いっくらなんでも狭いって」
なあ、って和を見るとウンウンと、大きく頷く。
「そう? じゃあ、さとちゃんは私と入ろうか?」
瞬間俺の隣で大ちゃんの手からバスタオルが床に滑り落ちた。
「ほ、ほら、大ちゃん固まっちゃったじゃんか〜。も、分かったから、行こッ!」
俺は二人の手を引き、浴室へ向かった。