第8章 椿姫
結局、まーくん親子に押し切られる形で、俺達はまーくんの家に泊めて貰うことになった。
酒も入り、気分が良くなった俺達は、リビングでテレビゲームを始めた。
ゲームが苦手な大野さんは、キッチンで後片付けのの手伝いだ。
「ほら、さとちゃん、それこっち持ってきて。…それはそこじゃないよ」
おばちゃんの注文に一生懸命応えようと、真顔でキッチンを動き回る大野さんがなんだか可笑しくって…
しかも”さとちゃん”てね?
「おばちゃん、やるなぁ…」
俺はゲームに集中して、笑いを堪えた。
「そう言えば和、話しあんだろ? 部屋行く?」
そうだ。
俺はまだ肝心なことを何もまーくんに話していないことを思い出した。
でも…
「大ちゃんのことならさ、母ちゃんに任せとけば大丈夫だよ」
俺の不安を読み取ったのか、まーくんが耳元で小声で言った。
「おばちゃん、俺らちょっと上行くけど、“さとちゃん”のこと頼むわ」
「あぁ、いいよいいよ、任せときな」
豪快なガッツポーズをして見せるおばちゃんとは反対に、隣で顔を真っ赤にして俯く大野さん。
あれは絶対勘違いしてる顔だな…