第8章 椿姫
和也side
気まずい雰囲気のまま、俺たちは夕食の席に着いた。
あんな場面を見られたんだ。
とても平気な顔ではいられる筈もない。
大野さんと目が合う度、恥ずかしさが込み上げてきた。
テーブルに用意されたのは、おばちゃんお手製の唐揚げに、肉じゃが、熱々の味噌汁。それにシーザーサラダ。
シーザーサラダは多分大野さんのリクエスト。
食の細い大野さんも、これなら量が食べれると、以前聞いたことがある。
大の大人の、しかも男が三人。
当然と言えば当然なのかもしれないが、どれもこれもすごい量だ。
「和君、ビール飲むだろ?」
冷蔵庫を覗きながらおばちゃんが言う。
本当なら飲みたいところだが、何と言ってもまだ車の運転が待っている。
「いや、車なんで…」
俺はおばちゃんの申し出をやんわり断った。
でも、
「泊まってくんじゃないのかい?」
当たり前のようにおばちゃんは言うが、俺は大野さんのことが気になっていた。
渋る俺に、まーくんがニコニコしながら、
「いいじゃん、泊まってけよ。な、いいだろ、大ちゃん?」
よく平気な顔でいられるもんだ、と心底この男の神経を疑ってしまう。