第8章 椿姫
雅紀side
俺は本当にどこまでバカなんだろう。
自分のことに精一杯でさ、和に寂しい想いをさせた。
それだけじゃない。
勝手に勘違いして、おまけに嫉妬して…
結局俺は自分のことしか考えてなかったんだ。
そう思ったら、泣けてきた。
和の背中に回した腕に、ギュッと力を込めた。
「痛いよ…」
胸にしっかりと抱き締めた和が苦情を言うけど、そんなの構やしない。
今は少しでも近くに和を感じていたい。
和の顎に手をかけ、上向かせると、今度は俺の方からキスをした。
「やっぱ俺、和がいないとダメだわ」
「バカ、今頃気づいたのかよ?」
そうだよ、今頃気付いたんだよ。
随分時間がかかったけど、でも失う前に気付けて良かった…本当にそう思う。
「俺も和だけだ」
ゆっくり和の身体をベッドに押し倒した。
見上げる和がニヤリと笑う。
「抱きたい? …それとも、抱かれたい?」
そんなこと、聞かなくても分かってるくせに…
「抱きたいに決ってんだろ?」
俺の言葉を待っていたかのように、和は俺の首に腕を回した。
グッと引き寄せられ、お互いの唇が重なろうとした時、
「そう言えば、母ちゃんは…」
「仕入れに行ったよ、大野さん連れて」