第1章 アヴェ・マリア
頬に触れる暖かい何か。
身体に感じる重み。
そして呼吸を制するように塞がれる唇。
ネットリした感触の不快感と、息苦しさに重い瞼を開いた。
霞む視界に男の顔。
誰だっけ…?
その顔に見覚えがあった。
相葉…ちゃん…?
ざらついた舌が俺の口内を忙しなく動き、俺の舌を絡め取ろうとする。
いや…だ…!
「う…ぅぅっ…!」
覆い被さる身体を引き剥がそうと、手を伸ばそうとするが、それは叶わない。
両手首が拘束されていた。
それでも何とか逃れようと、身を捩ろうとした。
でも、鉛のように重たい身体は思うように動いてくれない。
「どうし…て…? どうして、相葉…ちゃんが…?」
漸く解放された唇から出たのは、酷く掠れた声だった。