第7章 レクイエム
無人の教室で、俺は智くんと向き合って座った。
「来てくれると思わなかったよ」
自嘲気味に言った俺に、智くんはクスッと笑って、
「ちょっと迷ったけどね?」
と言った。
「あのさ、あの日…皆で海行った日、智くん言ったよね、最後のお願いって…覚えてる?」
うん、無言で頷く。
「俺の最後のお願い、聞いてくれる?」
「俺に出来ることなら…」
そう言った智くんの目には、もう涙が浮かんでて…
「泣かないでよ?」
「泣いてないよ…」
強がる君がやっぱりまだ愛おしくって…
「キス…して?」
無理な願いだと思った。
でも君は迷うことなく、言った。
「いいよ?」
そして躊躇いがちに触れた唇。
久しぶりに触れた智くんの唇は、やっぱり智くんの香りがした。
「ありがとう…」
「じゃ、俺行くね?」
立ち上がろうとした智くんの手を握った。
「第二ボタン…くれる?」