第7章 レクイエム
「第二ボタン、くれる?」
そう言った俺に、君はなんて言ったか覚えてる?
「時代遅れだよ」
そう言って君は笑ったんだ。
笑いながら、第二ボタンを俺にくれた。
そして、
「翔くんのボタン、俺にくれる?」
って、その綺麗な手を差し出したんだ。
時代遅れだ、って散々笑ったくせに、ね…
あの時交換した第二ボタン、君はまだ持ってるのかな?
もう捨てちゃった?
俺はまだ持ってるよ?
あの日からずっと、俺の胸のポケットには君から貰った第二ボタンが入ってる。
これ以上、
大切な人を泣かせないように…
守れるように…
でも、もう終わりにするよ。
君には君の…
俺には俺の幸せが、きっとある筈だから。
俺は智くんのボタンを、
智くんへの想いと一緒に、引き出しの奥にしまった。
「レクイエム」完