第7章 レクイエム
ごくありきたりの、当たり障りのない文章を、俺は読み上げる。
どこを探しても感動する要素の欠片もない文章に、卒業生の保護者達は涙する。
きっと胸には色んな感情が込み上げているんだろう。
そして、それは俺も同じだった。
俺はこの三年間で、大切な仲間を得た。
仲間と過ごした時間は、決して楽しい思い出ばかりではない。
苦い思いだって沢山した。
そうして過ごしたかけがえのない時間の中で、智くんに恋をしたんだ。
胸に熱いものが込み上げた。
声が震えた。
答辞の文章を全て読み終えた時、俺の頬には幾筋もの涙が流れていた。
でも、俺にはまだ伝えたい事がある。
俺自身の言葉を…
「在校生の皆さん、ここで出会った仲間を大切にして下さい。そして、大切な人を守れる人になって下さい。………卒業生代表、櫻井翔」
そう、これは大切な人を守れなかった自分に対しての言葉。
大切な人を泣かせた俺の懺悔の、言葉だった。
式の後、和也に智くんへの伝言を頼んだ。
『教室で待ってる』と…