第7章 レクイエム
木陰のベンチに座り、智くんの泣き止むのを待った。
その間も、俺は智くんの手をギュッと握り締めていた。
「ごめんね、泣いたりして…」
智くんの瞼が真っ赤になっていた。
「なんかさ…謝ってばっかだね、俺達」
俺の言葉に、智くんがクスッと笑った。
でもその笑顔はすぐに真剣な表情に変わった。
「翔くん、言って? 俺からは言えそうもないから…」
智くんが何を思っているのか、俺にはすぐに分かった。
深く息を吸い、一気に吐き出した。
「智くん、俺と…」
横の智くんが小さく頷く。
「俺と…別れてください」
やっと言葉を絞り出し、俺はキュッと唇を噛んだ。
握りあった手に力が入った。
「…うん。分かった。でも、最後に一つだけお願い聞いてくれる?」
「なに? 俺に出来ることなら…」
「キス…して?」
思い空気と共に訪れた沈黙。
先にそれを破ったのは智くんの方だった。
「ウソ、冗談だよ。やだな、本気にするな…んん…!」
俺は智くんの身体を引き寄せ、頬を両手で包むと、強引に唇を塞いだ。
途中お互いの鼻がぶつかるアクシデントもありながら、何度も何度もぎこちないキスを交わした。
やがてどちらともなく唇が離れた。
「ありがと、翔くん」
そう言った智くんは、やっぱり俺が一番大好きな笑顔だった。