第7章 レクイエム
「ねぇ、ジュース買って来てよ?」
なんで俺が、言いかけた俺に智くんは、
「翔くん、行こ?」
と笑顔を向けた。
自販機までの道程を、智くんの後に着いてトボトボ歩く。
何か話さなきゃ…
でも、何から話したら良いのか分からなくて、俺はただ日焼けで赤くなった智くんの背中を見つめていた。
「智くん、ごめん…」
俺の声に智くんの足が止まった。
ゆっくり俺を振り返った智くんは、俺が大好きな笑顔の智くんだった。
「あの時智くんのせいにして…俺が悪いのに…智くんは全然悪くないのに…なのに俺…」
無言で首を横に振る智くんの目に、光るものがあった。
「翔くんは悪くなんかないよ? あの時は俺がああしたかったから…だから俺、何とも思ってないよ?」
とうとう堪えきれなくなった涙が頬を伝った。
俺は駆け寄り、智くんの身体を抱き締めた。
「ごめん…ごめん、智くん」
その時になって漸く俺は気付いたんだ。
守られてたのは、俺の方だった、って…
俺の胸に顔を埋め泣きじゃくる智くんに、俺はそれ以上の言葉をかけることが出来なかった。