第7章 レクイエム
気まずい空気のまま、あっという間に夏休みはやって来た。
あれ程楽しみにしていた夏休みも、今となってはただの長い休みでしかない。
あれこれ2人で立てた計画は、全て白紙になった。
その代わりに立てられたスケジュールは、受験対策の為の夏期講習。
遊ぶ暇なんて、どこを探してもある訳がなかった。
それでも唯一許されたのが、5人で行くことになっていた海水浴だ。
智くんと2人きりだったら、まず許されることはなかっただろう。
地元の海水浴場だったが、それでも俺達にとってはちょっとした旅行気分だった。
その時ばかりは俺も、勿論智くんも、嫌なことは全部忘れて、思いっきり楽しもうと、心に決めていた。
この夏が終われば、俺と智くんの関係は終わってしまうから…
和也は俺達の関係がぎくしゃくしていることに薄々気付いているようで、時折どうしても暗い表情を浮かべる智くんに寄り添っては、声をかけていた。
その度に、なんでもないよ、と智くんは気丈に振る舞っていた。
その姿を見ているだけで、胸が苦しくなるのを感じた。
俺のせいなのに…
俺が悪いのに…
俺が智くんを苦しめてる…
こんなに好きにならなきゃ良かった。
そしたらこんな想いはしなくても済んだんだ。
智くんにだって、あんな顔させなくて済んだ筈だ。
溢れる涙を、白い波がさらって行った。