第7章 レクイエム
山ほどあった宿題も、二人で手分けして進めると、意外なぐらいに呆気ないもので、これなら夏休みを満喫できるだろうって範囲まで終えることが出来た。
「流石だよ、翔くんは…。教え方超上手いもん。俺の頭でもちゃんと理解できたし」
課題用の大学ノートをパラパラ捲りながら智くんが言う。
「いや、そんなことはないよ。智くんが覚えんの早いんだよ」
事実そうなんだ。
普段はぼーっとしている印象の強い智くんだが、実際は何をやっても器用にこなし、何より”感”がいいのかすぐに自分のモノにしてしまう。
まるで吸水性に優れたスポンジのようだ。
「ところでさ、翔くんのCDとDVD?すごい量だね」
壁一面に備え付けられたラックを見上げ、智くんが溜息を漏らす。
「何かCDかけようか? 何がいい?」
膨大な量のCDの中から、お気に入りを何枚かピックアップする。
「う~ん、俺普段洋楽が多いからな…翔くんのお薦めでいいよ」
OK、とウィンクを一つ送って、特にお気に入りのCDをプレイヤーにセットした。
溢れ出すヒップホップのリズムに合わせて、自然に身体が揺れた。
「意外だね、翔くんがこういうの聴くって。ビックリしたよ?」
俺の耳元に口を寄せる智くん。
智くんが言葉を発する度、耳に息がかかる。
俺の中で、何かが弾けた。
……もう限界だった。